天気の子をみた(ネタバレあり)

実は、『君の名は』が自分の中ではあまりヒットしなかった。面白くなかったわけじゃなくて、アニメーションと劇中歌がすごくシンクロしていてそれだけでうるっときたし本当に綺麗な映画だと思った。でも私にはファンタジー過ぎちゃって、何か教訓を得られたかって言われるとあまり得られなかった。たぶん、私が映画をみたときに感動する基準が、映画をみる前と後で意識が変わるかどうかだからだと思う。一番大きかったのは、新海監督のメッセージはあってないようなもので、大衆受けを狙ってるなと感じたこと。私にとっては、『君の名は』はアニメーションと音楽のシンクロを楽しむ映画なんだ、という認識になった。

だから、『天気の子』は全然期待していなかった。テレビで放送されたときにみればいいやと思っていた。でも仲いい人たちはほとんどみにいっていて、口を揃えて面白かったと言っていた。『君の名は』とは全然違うとも言ってた。だから、騙されたと思って(?)『言の葉の庭』と『秒速5センチメートル』をみた。どちらともすごく刺さった。映画から、世の中にどうしてもこれを伝えなきゃみたいな感情がひしひしと伝わってきて、新海監督は商業としてニーズに合わせて物語を作る人じゃなくて、本当は自分の作りたいものを伝えたい熱い人だという認識に変わった。私がみた過去作品は2つとも『君の名は』と比べたらかなり地味で万人受けはしなさそうだと思ったし、『君の名は』をうまいこと利用して自分の考えを世の中に発信しようと考えていたならめちゃくちゃ頭がいいと思った、完全に私の想像だけど。

案の定(?)、『天気の子』は面白かった。大好きなまち新宿、歌舞伎町がちゃんと光の面と闇の面で描かれていたし、誇張しようとはせずちゃんと事実・現実として描かれていたところがまずとても好き。あとは、かなり幸せとは何かみたいなテーマに触れていた気がしたこと。新海監督は仏のような人なんじゃないかなって思った。作品中でも視野がすごく広く感じたし、エンドロール見ても日本人だけじゃなくて中国人や、なんて読むかわからないような名前の異国の人たちと一緒になって映画を作っていて、きっと周りの人をたくさん巻き込んで一緒に幸せになってるんじゃないかなって想像した。本当に全て憶測だけど。少なくとも、新海監督は私の名前も顔も知らないけど、映画を見ることで幸せな気持ちになったり幸せってなんだろうって考えたりしていて、同じ映画を自分だけじゃなくて知り合いがみんなみている状況があるからすごい。

ちなみに、ラストはハッピーエンドでもバッドエンドでもないと思った。自分にとっての幸せのきっかけは、自分以外の人が幸せになること以外ありえないと思う。人の幸せが自分の幸せみたいなフレーズとはまた別の話で。自分にとってだけの幸せだって思うのは錯覚で、きっとどっかしらに他人が絡んでる。大事な人が生きていることはもちろん幸せだし、大事な人が生きることによって大多数の人間に不都合が生じるのは心苦しいことでもあるし、そういう不都合も含めて運命だと考えれば全部しょうがないってことにもなるし、総合的に考えたときにはどちらかというとハッピーエンドだと思ってるけど白黒つけられないのが現実であって、すごくこの締めくくり方は好き。